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エビデンスに基づいた健康情報

不定愁訴を遠ざける日常生活の留意点

寝落ちすることが多い?寝つきがよいのではなく自律神経のSOSサインかも!
2021-11-20
 ここ数日、濃紺の空に煌々と輝く月は春や夏と趣が異なり荘厳な姿が印象的です。爽やかで過ごしやすい日々に、例えば駅から自宅へ徒歩で帰る時と暑い炎天下では道のりは同じでも疲労の強さは異なると感じませんか?暑さ、寒さの気温が厳しくなるにつれ、自律神経の中枢から出す指令が多くなり、その結果自律神経は消耗してしまいます。つまり歩いて疲れるのは筋肉などの身体ではなく、自律神経中枢なのです。この例のように実際に疲労が起こっている場所と疲労を感じている場所が異なるために、疲労と疲労感は別物なのです。

 少し難しくなりますが、疲労感が起こるメカニズムを疲労医学の第一人者(前回もご紹介しました)梶本修身先生の言をお借りして掻い摘んでご説明しましょう。
暑さ、寒さの気温条件が厳しい時や、長時間のデスクワーク、あるいは激しい運動をしたときには自律神経への負荷は高まり疲弊していきます。すると自律神経中枢はサイトカイン(コロナ関連で耳にした方も多いと思いますが、指令を伝える物質です。)を通じて、脳の眼窩前頭野(がんかぜんとうや)と呼ばれる場所に”自律神経が疲れた”と信号を送ります。その信号を受けた眼窩前頭野はそれ以上自律神経に負荷をかけないために{身体が疲れた}という信号に変換して発信します。これが疲労感です。つまり、眼窩前頭野は自律神経の疲れを身体の疲れと感じるように信号を送り、身体のコントロールタワー 自律神経を守っているのです。簡単に言えば「これ以上自律神経を酷使すると危険だから休め」ということです。

 電車などでコロッと眠ってしまった経験やベッドに入った瞬間眠ってしまった経験が多くの方にはあると思います。これを”寝落ち”と呼ぶのですが、これは睡眠の質が悪かったり、寝不足だったりが原因で起こります。当然と思われるでしょうが、この状態は脳が強制的に意識をシャットダウンし、すぐに休息をとるように仕向けているのです。つまり、良すぎる寝つきは自律神経の疲れを表しているのです。よく眠ったはずなのに翌朝に疲れを感じるのも自律神経の疲労が回復していない証左ですので、意識して自律神経を休めるようにいたしましょう。

 前回に引き続き誤った#あるある#疲労回復法をお伝えしましょう。
 夏に多いのですが、疲れている時にはスタミナ食(うなぎや焼き肉など)、いわゆる昔から伝えられている精のつくものを食べて疲労回復を図ろうとする方は多いのではないでしょうか?スタミナ食には脂肪が多い食材が選ばれるのが特徴です。脂肪は胃腸に負担がかかるためより疲れてしまいます。こうした時には内臓に負担が少ない消化のよい食材を選び、一定程度疲労が回復してからスタミナ食を楽しむことがお薦めです。抗酸化力はあまり高くありませんが、激しい運動や長時間の仕事での疲れを緩和させるには、酸味のある梅干しやレモン、黒酢を利用したお料理が良いようです。前々回お話いたしました糖化予防にもなりますので、一石二鳥ですね。
(次回に続く)