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広報・機関誌

「何歳になっても脳はお手入れ次第」

『日刊サン』in Hawaii 2022年5月掲載

 新緑の季節が訪れて、庭の木々も花々も優しい風に気持ちよさそうですが、相変わらず世界の行く末が見えない日々が続いています。

広い世界での価値観は多様ですが、せめて事実に基づいた情報で判断したいものです。私たちヒトは偽りの情報であっても自分に都合のよい情報ばかりを集めてそれを信じてしまい、事実を歪めてしまう(確証バイアス)傾向があります。普通に考えれば、どうして詐欺などの被害に遭うのかと思いますが、この確証バイアスから逃れるのは案外難しいそうです。

ウクライナ侵攻で度々報道されているロシア側の情報について、日本のTV番組「報道特集」で事実を検証して、偽情報であると伝えていました。ロシアのプーチン政権が高い支持率を維持しているのも確証バイアスのなせる技かもしれません。

「ウクライナ人ってどんな人?とウクライナの現地取材をしているジャーナリストに尋ねた番組で「ウクライナ人は平和と自由のために命を賭けて戦っている人々です」との答えが印象的でした。侵攻や残虐行為に反対しているロシアの方も世界には数多おられると思いますので、どうか出身国での差別がありませんようにと願っております。

 認知バイアスは年齢を重ねた方ほど強くなる傾向にあるそうです。悲しいことに私たちは自然の老化現象として、毎日数千個のニューロン(神経細胞)を失っています。因みに、40歳以降、脳の容積は10年で5%ずつ減っていくそうで、脳機能は徐々に低下し、認知症の最大リスクは年齢とされています。

ところが最近の研究では、脳は80代になっても新しいニューロンを生み出す能力を維持していることが分かりました。
活発にニューロンを生み出すには何が必要なのでしょうか?
 ①血流をよくする
 ②同じストレスを慢性化させない
 ③語彙を増やす
 ④早歩きをする
 ⑤背筋を伸ばして座る
 ⑥利き手でない方の手で文字を書く
 ⑦10分間の空白の時間をもつ
 (テレビ、電話などをシャットアウトする)
などが伝えられています。興味のある方は「脳のメンテナンス大全」(クリスティン・ウィルミア著)をお読みください。

東京大学のプレスリリースでは「学ぶほど頭がよくなる仕組み」の解明が報告されています。この研究では学べば、学ぶほど記憶に携わる海馬が刺激されて、新しいニューロンの数が増加することが分かりました。学ぶというと私たちは勉強を思い浮かべますが、ヒトとのコミュニケーションから生まれる学びでも、読書で得る知識でもよいのでしょう。漫然と過ごすことを見直して生きることを指しているのかもしれません。「脳の構造は複雑だが、脳を変えるのは簡単」とウィルミア氏は述べておられます。コロナ禍や戦争など様々なストレスに晒されている私たちですが、脳が活発に働ける環境作りをしたいものです。

「日刊サン」アーカイブス

健やかに暮らすー腸活 断捨離と付喪神(つくもがみ)

目黒法人会 会報誌「椎の木」 2022年春号

 断捨離と付喪神
 コロナ情報が日々更新され一喜一憂する冬の日々から、春の訪れとともに感染状況が好転し、明るい陽射しの中、軽やかな気持ちで皆さまが過ごしておられること、原稿を書いている今、望まずにはいられません。長く続く自粛生活の中で、ご自身の生活スタイルを見つめ直された方も多いようで、「終活」や「断捨離」という言葉をよく耳にします。日本では家具やお皿、茶碗などの道具類が百年以上経つと付喪神になると言われています。どの品も人に寄り添ってその思い出が詰まっているのでしょう。
 付喪神とは室町時代に書かれた付喪神絵巻に登場した聖霊のことで、あっさりと捨てられた道具類が妖怪と化してヒトに復讐すると言われています。新しく便利な品が登場する現代社会では付喪神になることさえできない品々で溢れかえっているかもしれませんね。できれば、大切に愛おしんで道具類を使い、思い出の整理とともに断捨離に踏み切るのはいかがでしょうか。
 
 腸内細菌達との共生を上手に
 終活と同じようによく耳にする言葉に腸活があります。脳の無い生命は地球上に存在していますが、腸の無い生命は存在していないと言われています。現代病ともいえる肥満や糖尿病、うつや認知症などに、ヒトと共生している腸内細菌が関わっていることが近年の研究で判明してきました。2006年に論文誌”Nature”に痩せたマウスに肥満マウスの腸内細菌を移植すると、痩せたマウスがすぐに太ったとの報告が出され、研究では肥満者の腸内細菌叢には肥満マウスと同じような偏りが見られたことにより腸内細菌の偏在が肥満を引き起こす可能性が指摘されたのです。これはダイエット前に腸内細菌叢の改善が必要とも読み取れます。研究によれば、腸内細菌達が作り出す代謝物が宿主の腸内環境によって同じ菌種でも異なり、身体にとって良くも悪くもなりますので、腸内細菌叢には環境と多様性が重要なようです。数多の研究により、腸内細菌叢の多様性の低下が炎症を誘発し、肥満、脂質異常症、糖尿病などの原因となることが示唆され、抗生物質の多用、乱用が菌種の多様性を低下させるとして懸念を表明する研究者、ドクターも多いようです。

α-リノレン酸もリノール酸も腸内環境次第
α-リノレン酸には抗アレルギー作用があると報告されてきましたが、実はこれも宿主の腸内環境次第だそうです。一方で炎症を誘発するとして悪者扱いだったリノール酸は腸内細菌の代謝により過剰な腸管の炎症を抑制し、インスリン分泌を促進して血糖値を改善する働きがあると伝えられています。腸内細菌叢の多様性は食物繊維の摂取量と相関関係があります。自宅で食事を作る機会が増えた今日この頃、ヨーグルトだけに頼らず、食物繊維豊富な食材で40兆を超える腸内細菌達がしっかり働ける環境を作りましょう。


 

「椎の木」アーカイブス