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エビデンスに基づいた健康情報

栄養素と病気予防

栄養素のお話ーカルシウム/マグネシウム
2022-06-25
 突然ですが、古くから傷や止血に用いられてきた弟切草と呼ばれる薬草の名前をご存知ですか?セイヨウオトギリソウはセントジョンズワートと呼ばれ、欧米では抗うつ作用があるために治療薬やサプリメントとして知られています。西洋で古くは薬草の知識を持つ人々を魔女と呼び畏れたり、弾圧したりしてきました。日本でも薬草の知識は秘匿されることが多く、10世紀のころ、鷹匠の家系に伝わる弟切草の利用法を一家の弟が隣家の恋人に伝えたことに激怒した兄が弟を切り殺し、恋人もその後を追ったという悲劇が伝承され、弟切草の葉裏にある黒い点々は弟の飛び散った血と言われています。兄弟の諍いは哺乳類に多々みられますが、私たちの身体を支える栄養素ではどうなのでしょう。

 相互作用があり、一緒に利用することを避けなくてはならない成分も中にはありますが、その殆どは成分同士が仲良く協働します。その代表格が
カルシウムとマグネシウムです。カルシウム=骨は殆どの方がご存知ですが、カルシウムの働きはそれだけではありません。カルシウムは内分泌や細胞の状態を正常に保つために生命の維持に必須の栄養素であり、血中に含まれるカルシウム濃度は常に一定なのです。

もし血中カルシウムが不足すれば、身体はやむなく骨からカルシウムを補給し、細胞内のカルシウムは多いのに、骨はスカスカといった状態(この状態をカルシウムパラドックスと呼びます)に陥ってしまいます。カルシウムの不足は年齢とともに顕著になり、骨粗しょう症などの原因となりますので、日常の食卓で常に意識して補給しておきましょう。

 実は骨を丈夫にする最短の方法は20~30代にしっかりカルシウムを摂取しておくことです。
ヒューストン小児栄養研究センターの研究では女性の場合、10歳前後から骨の形成が始まるので、できればその2~3年前から意識的にカルシウムの摂取量を増やすことが有効と報告しています。けれど、年齢を重ねても悲観することはありません。

フランス国立医学研究所の研究報告では、80歳以上の3270人を1日1200mgのカルシウムと800IUのビタミンDをサプリメントから摂取したグループとそうでないグループに分けて追跡調査した結果を伝えています。18か月後、サプリメントグループとそうでないグループの比較では腰骨の骨折が43%、手首・腕・骨盤骨折が32%と大幅にサプリメントグループで少なかったそうです。また、骨折だけでなく、カルシウムの適切な摂取は高血圧、直腸がん、高コレステロール血症などの抑制に有意な結果が報告されています。

 
佐藤富雄先生のご著書では、お肉や乳製品などの動物性食品はコレステロールの上昇と関連していますが、カルシウム摂取の多い方の場合、便中に排泄される脂肪量が通常の2倍とのことで“お肉やチーズ、バターが好き”という方がカルシウムを意識的に摂ることを推奨されています。カルシウムはマグネシウムと一緒にご利用になることによって細胞内でしっかり働いてくれます。理想的なカルシウムとマグネシウムの比率は2:1とされていて、例えば牛乳(カルシウム:マグネシウム=10:1)をたくさん飲んでいるのにこむら返りなどが起こる方の場合、マグネシウムが不足しているかもしれません。