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エビデンスに基づいた健康情報

不定愁訴を遠ざける日常生活の留意点

朝食に何を食べる?ー国立長寿医療研究センターの報告より
2023-09-02
重要
 私たちの身体(臓器など)は太陽の運行に合わせてリズムを刻んでいます。 朝、太陽の光を浴びることで体内の親時計が時計遺伝子の指示のもと動き始め、その後朝食を摂ることで子時計の動きが始まることによって健やかな一日のリズムが整います。

 子時計にしっかり働いてもらうための朝食では、身体の機能を司るアミノ酸の摂取は不可欠で、特に筋力維持のためには重要な要素です。

 年齢を重ねればどうしても筋力低下は否めません。国立長寿医療研究センターの研究グループは、朝食時のタンパク質の質と筋力低下の発生率の関連に関して研究結果を報告しています。
 
 筋力の低下は将来の健康障害や死亡を予測する重要な指標とされています。因みに加齢による骨格筋量の低下(サルコペニア)の診断では、握力の評価が筋肉量の評価よりも優先されているのです。
 
 研究グループは60~83歳の健康な高齢者701例を対象として、朝食でのタンパク質の質と筋力低下の関連を調査しました。研究期間での累積参加人数は3019例です。

その結果、タンパク質の摂取量とは独立して、朝食のタンパク質の質が高いほど高齢の方々の筋力低下が抑制されることが分かりました。また、同グループは昼食、夕食についても解析しましたが、朝食のタンパク質のみが有意な関連を示しました。

 ではどんなタンパク質が良いのでしょう?
研究グループは食事記録でタンパク質消化性補正アミノ酸スコア(PDCAAS)を用いて評価しています。PDCAASのスコアが高いほどタンパク質の質が高いことを示しています。
 
PDCAASが高いグループでは豆類、魚介類、牛乳、乳製品、卵を多く摂取していて、低いグループでは砂糖、甘味料、油脂類の摂取が多かったそうです。

 研究グループでは、この研究は高齢者の筋力や生活の質(QOL)を維持するための栄養学的アプローチに対して価値ある識見を提供するかもしれない、と述べておられます。

 毎朝食に良質なタンパク質(アミノ酸スコア100)を意識して提供するのは案外大変です。今回の研究では植物性タンパク質と比較して動物性タンパク質がより体内利用率が高いと想定できます。

 朝食にはあまり多くを食べられない方や、酵素が目覚めていないので胃腸に負担がかかりがち、と感じる方には必要量の必須アミノ酸を含んでいる良質なサプリメントで補うことも良いかもしれませんね。