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エビデンスに基づいた健康情報

不定愁訴を遠ざける日常生活の留意点

変形性膝関節症のヒアルロン酸補充療法
2022-08-20
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特に女性に多くみられる(男性:女性=1:4)変形性膝関節症は、初期には歩き始めにお痛みを感じる程度だそうですが、症状が進むと歩行も困難になってしまうそうです。日本整形外科学会のHPで調べますと、加齢によって関節の軟骨が弾力を失い、擦り減ってしまうことで関節の変形が起こることが主要因とのことです。他にも肥満や骨折などの外傷が原因となったり、遺伝子によることもあると書かれています。

変形性膝関節症の治療には運動器を利用したリハビリや患部を温める物理療法、お痛みを軽減する薬物療法などの他膝関節内にヒアルロン酸注射を行うこともあります。
変形性膝関節症(OA)患者様の関節内へのヒアルロン酸を注入する関節内補充療法の有効性と安全性については実は結論が出ておらず、各国のガイドラインの推奨事項にも違いが見られるそうです。

ヒアルロン酸関節内補充療法の是非に関してカナダで行われた研究結果が2022年7月6日のブリティッシュメディカルジャーナル誌電子版に掲載されていますのでご報告いたします。

この研究では疼痛(お痛み)、機能(関節の使い勝手)、そして有害事象について調べています。その結果は概略として疼痛に関しては1983年ころの古い記録では治療効果が大きかったのですが、新しい記録(2012年以降)になるほど、その効果は小さくなっています。
また、機能につきましても同様の結果で、臨床的に意義があるレベルには達していないと結論づけています。

問題となる有害事象ですが、この研究では関節内補充療法は、プラセボに比べ、重篤な有害事象リスクの上昇と関係していたと報告しています。筆者の結論を纏めますと、関節内補充療法はOAの疼痛をやや軽減しますが、臨床的に意義のある差とは認められず、プラセボに比べ重篤な有害事象のリスクを増加させていたことから、OA患者様に対する関節内補充療法の広範な実施は支持されなかったとのことです。

現在、ヒアルロン酸関節内補充療法をなさっている変形性関節症の患者様にはすぐに中止することをお薦めしているわけではありませんが、今後の治療についてこうした論文があることを知っていただき、参考になさっていただければ幸いに存じます。

変形性膝関節症の予防には太ももの前の筋肉を足上げ運動などで鍛え、肥満に注意し、膝などを冷やさず温めて血流を良くし、正座を避けてください。どれもあまり無理をせずとも実施できそうですね。
歩けることは日々の生活の質を向上させるので、歩く機能に感謝したいものです。今日も一日お健やかに。