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エビデンスに基づいた健康情報

不定愁訴を遠ざける日常生活の留意点

疲労回復にお薦めの栄養素
2021-12-11
注目オススメ
 12月には師走をはじめ様々な呼び名があります。何気なく使っている「年の瀬」もその一つで、”瀬”とは川の流れが速い場所を指す言葉です。

1年があっという間に過ぎ去ると感じる今日この頃、年の瀬は特に時間の流れが速いと感じます。大掃除などで暖房を切って立ち働く12月には身体が芯から冷えることもあるでしょう。そんな時、ショウガ湯などはいかがでしょうか。ショウガは身体の体幹部の血流を高めるので、身体を内側から温める効果が期待できます。但し、末端の血流改善効果はあまりありませんので、手足の冷えには起毛ソックスなどをご利用ください。忙しい暮れには疲労も溜まりやすくなります。

 前回に引き続き、疲労と疲労回復についてお話をいたします。前回のお話と少し重複いたしますが、疲労と疲労感は別物疲労感に気づいたら休むことを身体が求めているのだと思ってください。活動し続けることにより脳内に活性酸素が大量に発生し、酸化ストレスがかかり、細胞から老廃物が排出されて疲労因子(FF)と呼ばれるタンパク質が増え、最終的に”活性酸素の攻撃を受けてFFが増加した”との信号を脳が捉え、疲労感となります。

私たちの身体は常にプラスとマイナスの綱引きで、疲労因子が放出されれば、疲労回復因子が作動して細胞の修復を始めるシステムとなっています。ところが活動が活発な日中には活性酸素も大量に発生するために、疲労回復因子による修復が追いつかないために、損傷が修復を上回ってしまいます。そこで、夜間の修復が期待されますが、睡眠不足あるいは良質な睡眠が取れていないと損傷は蓄積していってしまいます。因みに疲労回復因子の反応には個人差があり、6時間程度の睡眠で回復する人もいれば、10時間睡眠をとっても回復せずに疲れが残る人もいます。

 では睡眠だけに頼らずに食事や栄養素で抗疲労を実現するにはどうすればよいか、関西福祉大学の倉恒弘彦教授のお話を参考にしたいと思います。
食事に関しては「抗酸化力を上げて、バランスよく」が基本となります。大学生対象の調査では疲労を感じる度合いの強いケースとして朝食抜き、特に重度の疲労は夜遅い夕食との結果となりました。興味深いのはパンやパスタよりも米飯のほうが、副菜のバランスが相対的に良いため、疲労回復に有効だったとのことです。

 食事だけで抗疲労を実現するのは難しいケースはどうしたらよいのでしょう?その場合、サプリメントも選択肢に入ります。抗疲労効果に関して科学的検証結果が出ている栄養素をいくつか掻い摘んでお伝えしましょう。
ビタミンC(アスコルビン酸)はおそらく最も有名な抗酸化物質で体内、脳内に発生した活性酸素の駆除に役立ちます。

コエンザイムQ10(CoQ10)は慢性疲労症候群の治療にも利用され、有効との報告も出ています。
CoQ10は体内のエネルギー工場、ミトコンドリアでのエネルギー産生の作業員として重要な役割を果たしています。 
CoQ10の体内濃度は加齢とともに大幅に減少するために栄養素として補給したいものです。

アミノ酸は生命にとってあらゆる機能の土台となる必須の栄養素です。
体内貯留量はあまり多くなく、特に必須アミノ酸と呼ばれるグループでは体内での合成ができませんので、日々摂りたい栄養素でもあります。
アミノ酸はダメージを受けた細胞やタンパク質の機能回復を支える成分で脳が疲労するとアミノ酸の血中濃度が低下するという報告があります。

フルスルチアミン(ビタミンB1)は細胞のエネルギー産生をサポートする役割を担っています。
また、脳の働きを順調にするという報告も出されています。
ビタミンB1は豚肉や玄米に多く含まれていますが、そのままでは吸収されにくい成分です。

イワベンケイ抽出物はストレスの多い状況下で疲労を和らげ、神経伝達物質の活動を促進し、短期間の記憶や集中力をサポートすることが報告されています。
また健全な心血管や代謝機能の維持に有効との報告もあります。
私見ではありますが、利用することで睡眠の質の向上を感じております。
イワベンケイ抽出物は抗不整脈薬やアドレナリン遮断薬をご利用の場合には禁忌と考えられますので、ご注意ください。

α-リポ酸は細胞のエネルギー産生を助け、疲労の軽減に役立ちます。
但し、痩せることを目的として高容量のα-リポ酸をご利用の方に低血糖の副作用が報告されていますので、ご注意ください。

 最後に自律神経を休めるにはやはり疲れたら休むと最優先し、お仕事中でも1時間に1回5分程度は休み、オフィスワークの場合にはわずかでも身体を動かしましょう。就寝前のスマホやメールも1時間前には終了し、脳をしっかり休めてあげましょう。1日の疲れは1日ごとにリセットするのだと思い、身体を労り新しい年に備えたいものです。