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エビデンスに基づいた健康情報

不定愁訴を遠ざける日常生活の留意点

疲労がマックスになると疲れを感じない”危険水域”に突入している場合も。
2021-11-27
重要
 12月1日からクリスマスまでの日にちを数えるアドベントカレンダーの出番が間近になりました。アドベントカレンダーには日付を書いた窓がついていて、中に簡単なお仕事の指示とご褒美のお菓子が入っています。クリスチャンでなくても楽しめる行事ですので、昨今日本でも定着しつつあります。子供たちがワクワクしながら小窓を開ける仕草に大人たちも癒されるのではないでしょうか。けれど大人たちにとって12月は大掃除をはじめ、年末の仕事が増える忙しい時期なので、”疲れた”と感じる日もあるでしょう。前回に引き続き、疲労と疲労感、自律神経のお話を続けましょう。

 疲労感を無視して休まずに自律神経を酷使し続けると、最悪の事態、突然死を招くこともあるそうです。先述の梶本先生によれば、疲れを感じても休まずに活動し続けるだけでなく、場合により疲労感そのものを自覚できないこともあるそうです。仕事や運動での達成感や充実感によって眼窩前頭野が発信する警告を受け損なってしまうので、疲労感を実感できなくなってしまうのです。こうした”疲労感なき疲労”が蓄積すると私たちの身体は危険水域に突入しますので、疲労を感じることがとても重要なのです。

 前回に続き間違った”あるある疲労回復法”をご紹介していきましょう。
健康意識の高い方にありがちなのが、仕事が終わったあとや休日には必ず運動すると決めておられる方が見受けられます。もちろん適度に運動することは大切なのですが、疲れている時にまで運動する必要はないのです。運動をし過ぎは自律神経に過度な負担をかけ、活性酸素を大量に発生させてしまうために、疲労が悪化してしまうだけでなく、老化にも繋がります。適度な運動とは多少年齢差はあっても、週2~3回、会話のできる程度の軽い運動で概ね週単位で150分ほどが良いとのことです。また、自律神経のバランスが整っていない朝方の運動は避けたいものです。

 疲れている時にエナジードリンクや栄養ドリンクを利用してもうひと頑張り、という方も多いかもしれません。栄養ドリンクなどは覚醒作用のあるカフェインなどの作用で一時的にスッキリした感覚を得られるそうですが(私は利用したことがないために分かりませんが)、栄養ドリンク自体には疲労回復や予防効果はあまり期待できず、過度な利用ではむしろ隠れ疲労を招く可能性も指摘されています。因みに米国ではカフェイン依存症を招く可能性もあるため、米国医師会では未成年へのエナジードリンクや栄養ドリンクの販売禁止を呼びかけています。

  では、疲労回復を助け、自律神経を守る食には何があるのでしょう?

 まず、自律神経系が産み出す大量の活性酸素を除去するために抗酸化作用のある食材を選びましょう。検証実験によれば鶏の胸肉などが有効で、それに野菜や果物などポリフェノールの多い食材を組み合わせる方法があります。また、コーヒーに含まれるクロロゲン酸にも高い抗酸化作用が認められていますが、カフェインの過剰摂取とならないように1日に4杯程度に留めましょう。毎日、そうした食材を選ぶのが大変という方にはサプリメントもお薦めできますが、何を選ぶかは次回にお話しいたします。
(次回に続く)