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エビデンスに基づいた健康情報

新型コロナウィルス感染症とワクチンについて

オミクロン株は気管支で急増するー香港大学の研究報告
2022-01-08
「日輪は古びて廻り 年新たー高浜虚子」
 2022年、寅年の今年最初のお話をお届けいたします。
昨秋から沈静化していましたコロナ感染が暮れからまた勢いを増し、流石に2年もの長き期間を我慢して過ごされた皆さまには「またか」とうんざりなさっているのではないでしょうか?私も同じ気持ちです。そのため、新規感染者が増えてきても、どうしても認知バイアス(認識の偏り)、特に確証バイアス(自分にとって都合の良い情報だけを無意識に集めてしまいます)がかかりがちになります。オミクロン株は感染しても軽症や無症状だから心配ないと思ってしまうのはその例かもしれません。(私自身、そのバイアスから逃れるのは難しいと感じています。)事実、オミクロン株に関してWHOやFDAからも症状は比較的軽症で入院リスクが低いと報告されています。けれど、そのことと感染しないように配慮しないでいることは異なります。

 これまでの研究報告では(香港大学研究)、オミクロン株は従来の株に対して主に気管支で70倍もの速さで増えるそうですが、一方で肺でのウイルス複製は従来株に対して1/10以下だそうですので、感染した方の多くが軽症であることの一因かもしれない、とのことです。

 また、スパイクたんぱく質に大量の変異がある点が感染しやすい要因の可能性も示唆しています。米国での研究ではデルタ株に感染した方の体内で風邪のウイルス遺伝子も同時に獲得したことによって、オミクロン株の易感染性の可能性も指摘しています。そのため、私たちが日々できる予防は、うがいとマスク、不要不急の外出自粛が最優先となるのではないでしょうか。

 新薬の承認もされました。この新薬(モルヌピラビル)に関して、日本感染症学会が治療薬の指針を出していますので、簡略にお伝えしておきます。日本国内、海外施設併せて20での臨床報告では、発症5日以内の投与で重症化が30%減少し、死亡例は治療薬投与群で0.1%、プラセボ(偽薬)群で1.3%と報告されています。但し、データ数が少ないために有効性の確立には至っていないようです。妊娠中、妊娠の可能性のある方への投与はしないこと、授乳中の方への投与は検討中であることなどが併記されています。現在、日本国内ではモルヌピラビル投与は京都市在住の男性で1件報道されていますが、経過報告はまだ届いておりません。治療薬には大きな期待が寄せられていますが、現時点ではまだまだ不明なこともあり、私たちは気を緩めずに予防に注力していきましょう。
本来、楽しい話題で年頭のご挨拶をさせていただきたいと思っておりましたが、叶わずにこうした話題で申し訳なく存じます。
今年が皆さまにとりまして、昨年より佳き年でありますこと願っております。