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広報・機関誌

味覚の減退にストップを!

『日刊サン』 in Hawaii 2023年1月掲載

 ハワイの皆さまも日本と同様にお正月には歳神様を迎えられ、新しい1年の始まりを祝われたと思います。1月は睦月と呼ばれますが、親しい方々が集い陸み合う月を指しているそうです。


 1月7日までは松の内、15日で正月事終いとなり、ハレ(非日常)からケ(日常)へと移ります。改めまして明けましておめでとうございます。今年も最新の論文などを参考に健康情報をお伝えしてまいりたいと存じます。

 

 クリスマス、お正月と行事が続き、美食を堪能なさった方も多かったと存じます。ところが昨年に比べてお料理が不味くなったと感じる方もおられるようで、場合により夫婦喧嘩に発展して楽しいはずの場が気まずくなってしまうこともあるようです。これは料理の腕が問題なのでしょうか?


 私たちの味覚には苦味、うまみ、酸味、甘味があります。昨今、外食やコンビニ食などを利用される方も多く、どうしても均一の味に慣れがちです。そのため若い方でも味覚が鈍化すると言われています。


 まして年齢を重ねると味覚の衰えが際立ってきますが、それが自覚できずに料理に問題があると思いがちになるそうです。研究によれば、ご高齢の方の場合、塩味は若い方に比べて12倍も感じにくくなると報告されています。因みにうまみは5倍、甘味は2.7倍程度感じにくくなり、味覚の衰えは一律ではないようです。


 塩分が高血圧の大敵であることは周知の事実ですが、塩味を感じにくくなると濃い味付けが欲しくなります。ではどうしたらよいのでしょうか?うまみの衰えは塩味に比べて遥かに少ないので、うまみを上手に利用する味つけが望ましいようです。


 昔から日本人は昆布やシイタケ、鰹節など、うまみ十分の出汁によって食事を供してきた歴史があります。世界的に日本食がヘルシーと言われる由縁でしょう。うまみに加えて味覚の低下が少ない酸味をお料理の中に入れることも良いそうです。


 また、塩味自体も普通の塩加減と薄目の塩加減の2種類を用意し、アクセントをつけることで、味覚の衰えを補えるという研究報告もあります。味覚は視覚からも影響を受けますので、白い食材には黒系のお皿、お肉など色の濃い食材には白系のお皿に盛ることで食欲増進にも繋がるそうです。

 

 味覚の衰えは加齢だけが原因ではありません。亜鉛は日本人の食事摂取基準(厚生労働省―必要最低量の基準)では男女ともに基準値を下回っています。食事から摂る量が足りないだけでなく、亜鉛を体外に排泄してしまうフィチン酸やポリリン酸(加工食品などに含まれています)によって不足する可能性もあります。


 加工食品に偏りがちな食卓では、塩分過剰摂取と亜鉛の不足が両輪となって味覚の減退だけでなく高血圧のリスクも加速してしまうのです。


 今年もお健やかにお過ごしくださいませ。

 

「日刊サン」アーカイブス

地球に暮らす私たちと呼吸の関係

目黒法人会 会報誌「椎の木」 2023年冬号

 明けましておめでとうございます。
「智に働けば角が立つ 情に棹させば流される 意地を通せば窮屈だ とかくに人の世は住みにくい」有名な夏目漱石の草枕冒頭です。揺れ動く世界や日本独自の混乱した情勢の中、昨年はこうした気持ちで過ごされた方も多かったかもしれません。

 けれど地球創生の頃を振り返れば、想像を絶する過酷な中、生命は初めてその原初ともいえる小さな丸い泡をつくり多大な努力を払って宇宙の無秩序さにちっちゃな握りこぶしを振りかざし、生命の無い世界に立ち向かったのです。―「超圧縮地球生物全史―ヘンリー・ジー著」

 その後、生命は誕生しては絶滅するプロセスを何度も繰り返し、今の地球に生存する生命と環境を生み出しました。私たち全てがそうした生命の膨大な犠牲の上に成り立った宝物のような存在なのです。

 生きにくい世ではありますが、与えられた命を丁寧に紡いでいき、次世代に、より良い社会を残すことは私たちの責務でもあると思います。そのためにも自分のお身体を健やかな状態に保ち、正確な情報を掴み取れる若々しい脳を維持したいものです。

 良い呼吸・悪い呼吸
 生命が地球に花開き多様性が定着したのはかつて地球に存在しなかった酸素が満ち溢れ、その酸素を活用できるようになったことが大きな要因です。

 私たちヒトも呼吸によって酸素を取り入れ二酸化炭素を体外に排出しエネルギーを作り出しています。生きている限り、呼吸は無意識に絶え間なく行われていますが、加齢によって呼吸機能が低下すると肺に充分な酸素を送り込めず、エネルギーが不足していきます。

 結果、代謝が低下して疲れを感じたり身体の各部位に不具合が起こりやすくなったりします。肺や呼吸機能は20代をピークに減退していきます。また、ストレスを強く感じる社会生活では、年齢にかかわらず “浅くて速い呼吸” いわゆる悪い呼吸になりがちだそうです。

 特にスマホなどを操作するときに、首が前に傾くスマホ首、背中が丸まっている猫背など姿勢が悪い方やデスクワークが長い方などの場合、注意が必要でご自身の呼吸に目を向けてみましょう。

日常生活で呼吸筋を鍛えましょう。
 日常生活で呼吸筋を鍛えるには
 ①姿勢を正す
 ②声を出す、歌を歌う
 ③ハーモニカやオカリナなど “吹く楽器” の演
     奏、但しトランペットなどは高齢の方には
    不向きだそうです。

 また、簡単ストレッチも有効だそうで、手を後ろで組んで、鼻から息をゆっくり吸い、吸い切ったところで組んだ両手を開き、手を腰の横まで延ばしながら胸を開いてゆっくり口から息を吐く、と誰にでも手軽に取り組むことができそうですね。

 因みに認知症予防には鼻呼吸が有効と報告されています。酸素の満ち溢れた地球で、呼吸筋を鍛えて良い呼吸をしながら、エネルギーに満ちた健やかな日々をお過ごしください。

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