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エビデンスに基づいた健康情報

良質な睡眠をとるコツ

睡眠3ー睡眠不足と睡眠の役割
2021-08-14
 夜、庭に面したベランダではそこかしこから虫の声が聞こえ、秋の密やかな訪れを感じます。虫の音は和歌などにも詠まれたように、古くから日本人の楽しみとして根付いています。因みに虫の音を美しいと感じるのは日本人特有の感性と言われていますが、実際はどうなのでしょうか?虫の音の奏でる音楽を聴きながら床に就くのも風流ではありませんか。十分な睡眠をとった翌朝は元気いっぱいで活き活きとして活動的です。睡眠不足の朝、鏡を見るとげんなりすることがあります。スウェーデンのカロリンス研究所の研究によれば、研究参加者が8時間眠ったあとに31時間眠らないで写真を撮り、第三者にその写真をみてもらうと、睡眠不足の人たちの写真は不健康で魅力的でないと判断されたそうで、睡眠不足は如実に顔に現れるのですね。

 肌だけでなく睡眠不足が日常生活に支障をきたすことは経験者には実感があると思います。サイエンス・アドバンス誌に掲載された興味深い論文を一つご紹介しましょう。乳幼児では睡眠は脳を作るために重要な役割を果たします。ところが2歳半を過ぎますとその役割は脳の機能を維持することとダメージの修復に移行するそうです。鮮明な夢を見るレム睡眠は脳が大きくなるに伴い徐々に減っていき、新生児のレム睡眠が50%あるのに対して、10歳では25%まで減少し、歳を重ね50歳を過ぎた頃には15%程度となるそうです。(50歳を過ぎるころには十分に脳が大きくなるのでしょうが、その反面脳の神経細胞脱落などで萎縮も始まるそうですので、悲しいですね。) 

 私たちヒトだけでなく、多くの動物たちは目覚めている時にはある程度神経的なダメージを受けますが、睡眠中にそのダメージの修復が行われるそうです。良質な睡眠は食事と同じくらい重要なことである、とこの論文の筆者は語っておられます。別の論文では成人の望ましい睡眠時間は心筋梗塞や脳梗塞のリスクを低減させる6~7時間でこれをスィートスポットと呼ぶそうです。私自身、6~7時間睡眠を心がけると無駄に眠らないように努力するためか、かえって深く眠れるようになった気がします。