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エビデンスに基づいた健康情報

不定愁訴を遠ざける日常生活の留意点

その疲れは自律神経の疲弊かもしれません
2021-11-13
「たくましく八つ手は花になりにけり 江嵯尚白」
庭の八つ手も小さな白い花を咲かせ、観察すると虫や蜂が訪れています。梅や桜が葉を落とし寒々とした風景の中で八つ手が青い大きな葉をいっぱいに広げている姿にちょっと元気を貰えそうです。

 コロナ禍で始まった在宅勤務を続けておられる方の中には、活動量が少なくなったにも拘わらず疲労感が増しているという方が多いと報告があります。そうした疲れの原因は「脳」にあるそうです。脳の中でも睡眠や呼吸、心拍など身体のリズムを全て司る自律神経系を酷使することによって疲れが生じるのだそうです。また、その疲れは全面的な在宅ワークよりも、多くの企業が現在採用している出社と在宅の不規則な勤務形態によって、より自律神経の負担が大きくなり疲労が蓄積する原因となっているそうです。

 疲労医学の第一人者で医師の梶本修身先生によれば、自律神経が酷使されることにより、大量の活性酸素が発生し、これによって自律神経を構成する神経細胞をどんどん錆びつかせ、結果自律神経の機能低下を招くとのことです。そしてこの疲労の蓄積を放置すれば、脳の老化へと進んでいきます。24時間休みなく働いている自律神経は身体の中でも脳で最も老化しやすく、かつ加齢とともに機能低下が進んでいくのです。
自律神経の酷使→疲労の蓄積→自律神経細胞の老化】という図式になります。
もともと自律神経機能は20代で低下しはじめ、40代では半減、60代では1/4以下になるそうです。

 では、これ以上自律神経に過度な負担をかけずに疲労を回復させる方法はあるのでしょうか?今後数回にわたってお話していきたいと思います。
まず、あまり耳触りは良くありませんが、間違った疲労回復方法から先に2回に分けてお伝えしたいと思います。

 疲れた時に飲酒で気分回復と考える方も多いかもしれませんが、飲酒はあくまでも一時避難に過ぎません。リラックスした気分になっても、疲労は回復せず、むしろ隠れ疲労に繋がるそうです。特に注意が必要なのが{寝酒}です。就寝前にアルコールを摂取するとよく眠れるのは間違いで自律神経中枢を麻痺させて、疲労回復に重要な睡眠リズムを乱すだけでなく、眠りの質自体を悪化させます。飲酒でリラックスしたいときには、就寝の3時間前までには切り上げたいものです。

 ”疲れている時には熱いお風呂に入って疲れを取る”もよく聞きますが、これも間違いだそうです。
 熱いお風呂に浸かるとすっきりした感覚になりますが、これはβエンドルフィンと呼ばれる快楽物質が出ることで脳が勘違いしているのです。実験によれば熱いお風呂は身体を疲れさせるそうで、疲労回復には逆効果となりそうです。入浴で疲れを取るには、39℃ほどの温度で心臓の高さ程度のお湯に10分ほど浸かるとリラックスの副交感神経が優位となり疲労回復に繋がるそうです。また、入浴は就寝の1~1時間半前までに済ませると睡眠の質が上がります。(次回に続く)